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■第10回
「田中裕二のはなし」

初めて会った談志師匠は
「いいか。田中を絶対に切るなよ」と
俺に言った

前回、坂本竜馬のことは「もちろん好きだ」と言った俺だけど、相方である田中裕二のことは、なんだかもうよくわからない

まずね、お笑いコンビ独特の関係性があって、好きとか嫌いなんて感情を持っていると仕事にならないから。俺たちがモメるのって、たいていはネタを作っている時。俺がおもしろいことを思いつかずにイライラしてて、しかも、本番まで数時間を切ったなんて場合が最悪。そんな時に田中がツッコミを間違ったりすると、まぁモメる。ふだんなら「ちょっと違う。こうツッコんで」とか言えるんだけど、そういう最悪の状態だと「何回言えばわかんだよ! 20年やっててこれか!」となってしまう。でも、田中にしてみれば、とにかく本番に間に合わせなきゃいけないから「わかったわかった。でも、今はネタを作るのが先だから」となる。もちろん、俺も焦ってはいるんだけど、今度はその「わかったわかった」がムカつくわけ(笑)。だから、「わかってないから言ってんだろ!」と言いながら、同時にネタのことも考えるっていうね。いくらモメていようがネタのことは考え続けて、かつ、5分前まで喧嘩していようが本番の舞台じゃ、ふたりでくだらないことを言い合う。あまりにも激しいギャップ。漫才コンビとは、本当に変わった職業だなぁと思う。

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文:唐澤和也
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