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じゃあ、大人たちの席にいないで、親戚の子どもたちと一緒にいりゃ良かったじゃんって話なんだけど、当時の俺は、なぜか従兄弟たちにも心を閉ざしていた。実際、親戚の子ども連中は、大人たちとは別の部屋でトランプや百人一首をしてたんだけど、そっちにいるほうがもっと気が進まなくて。結果、「怖いなぁ」と思いながらも、宴会の開かれてる大広間、その一番端っこに黙って座っていたっていう苦い記憶がある。

人生で一番悲しかった記憶は、子どもの頃に飼っていた犬が死んじゃった時のもの。ポコという名前の犬だったんだけど、ポコは俺が殺したようなもんだから。殺したというか、ある時、俺が作っていた学校に提出しなきゃいけない凧の上にポコがションベンを漏らしちゃったのね。俺はしつけをしようと思ってポコをパコンと叩いた。で、その夜にコタツのなかに入ってたポコが痙攣し始めて、そのまま死んじゃったっていう。あれは、本当に悲しい出来事だった。パコンと殴った記憶が鮮明な分、「僕がポコを殺しちゃったんだ」という思いが幼い俺にのしかかってきたから。たぶん、7歳か8歳の頃の記憶だと思う。

ただ、その時、悲しいと同時に「笑い」と「怒り」の感情を抱いたことも鮮明に覚えている。ポコが痙攣を始めた。おふくろがポコの体をさすって「がんばってポコ!」なんて懸命に呼びかける。その甲斐もなくポコが事切れる。と、その瞬間のおふくろが「あ、死んだ」って淡々とした口調でつぶやいて(笑)。その言い方が死の瞬間とは不似合いだったのがおもしろくて、俺は思わず笑ってしまったっていうね。同時に愛犬が死んでしまったというのに、「なに笑ってんだよ?」という自分に対する怒りがあったことも、その夜の記憶には焼き付いている。

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文:唐澤和也
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