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ところが、映画や小説に触れる機会が増えていくにつれて、ポコが死んだ夜の複雑な感情も、ある意味でひどく人間らしい気持ちなのだと気づくようになる。たとえば、『真夜中のカーボーイ』というアメリカンニューシネマの傑作。この映画の主人公のひとりを演じるダスティン・ホフマンが、ひょんなことからツレとなったジョン・ボイトと一緒にニューヨークからフロリダを目指す。ニューヨークでの生活は裏稼業に手を染めても貧乏で、ひどいもんだった。だから、ふたりにとっては「夢の国」のように思えたフロリダを目指すんだけど、既にダスティン・ホフマンは病魔に冒されているわけ。

で、物語のラスト、ジョン・ボイトがアロハシャツだなんだって、フロリダっぽい服を買ってきて相棒を着替えさせようとするんだけど、なぜかダスティン・ホフマンが泣いてるわけ。ジョン・ボイトが「もうすぐ夢の国に着くっていうのになに泣いてやがんだ?」と聞く。すると、ダスティン・ホフマンがこう答える。

「小便もらしちゃった」

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文:唐澤和也
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