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それまで悲しい気持ちになっていた俺は(実際、このあとダスティン・ホフマン演じる男は死ぬ)、この台詞を聞いた瞬間に思わず笑ってしまった。でも、ポコが死んだ夜に「なに笑ってんだ?」と思った怒りの感情などなく、なんて素晴らしい名場面なんだろうって感じたわけ。つまり、「人は究極に悲しいと笑ってしまう生き物だ」っていうね。『真夜中のカーボーイ』のこの場面は、ものすごく悲しいのと同時に笑ってしまうという奇跡的な名場面だと思う。

映画で記憶に残る名場面と言えば、けっこうある。同じくアメリカンニューシネマの『明日に向って撃て!』のラストシーンや、黒澤映画の『生きる』のブランコのシーン、そして同じく黒澤作品『どですかでん』で伴淳三郎が部下に無愛想な妻の文句を言われた瞬間「貴様!」と殴りかかる場面。別の機会に同じ質問をされたら、違う映画の名シーンを答えられるほど、俺にとって素晴らしい映画の記憶は数多く存在する。

これが小説のなかの名場面となると、なかなか難しい。小説の場合、名場面というよりも作品全体を通しての印象が記憶に残るからだ。ちなみに俺は、10年ぐらい前から読書のあとに必ずやっている習慣がある。

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文:唐澤和也
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