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恋愛論で言えば、俺は10代の頃に深い感銘を受けた作品がある。それは、評論家の亀井勝一郎が『青春について』という著作のなかで綴った「恋について」という恋愛論。『青春について』は俺のバイブル的存在なんだけど、その恋愛論も素晴らしくて、いわく「失恋した人というのは、遺族と同じだ」と。当時、中学生だった俺は、まだ失恋の経験なんてないくせに「そういうもんなのか!」って思ったのをいまだに覚えている。ってことは、よっぽど印象的だったんだけど、亀井勝一郎はこんな言葉も続けていた。

「失恋した人は遺族と同じなんだから、それを癒す方法などありはしない。ただひとつ言えるのは、とにかく体を疲れさせて毎日眠ることだ

恋愛相談に対するノウハウの章でもあったはずなのに、「癒す方法はない」と言い切っちゃうのもすごいけど、中学生の俺は、それって真理だよなと思った。要は、失恋の痛手は遺族となるのと同じぐらい深くて、時間しか解決してくれないと。

大人になった今も、亀井勝一郎の言葉は心に残っていて、実は、さらに大きくなったりもしている。男と女以外にも失恋に類するものは、世界中にあふれていると感じるからだ。

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文:唐澤和也
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