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じゃあ、俺はどういうタイプかっていうと、生来の俺は気高くなんかない。でも、気高さに憧れはある。だから、こういう場合はこう、こういうケースならばこうしようって、反射的なものではなく、全部あとから学習してなんとか身につけようとしてきたような気がする。

ジョゼフ・コンラッドというイギリスの作家がいる。映画『地獄の黙示録』は、彼の『闇の奥』という小説が原作だと言われているんだけど、彼の代表作のひとつに『ロード・ジム』という小説がある。俺はこの作品の主人公に、ひどく共感した。主人公は水夫。ある日、乗船していた客船が転覆してしまう。水夫は、船長に言われるままに、乗客よりも先に救命ボートで逃げてしまう。なんとか命は助かったものの、裁判により「責任放棄」と弾劾される。結果、彼はそれまで住んでいた社会から弾き出されて未開の南の島にたどり着く。その地での彼は、逃げ出してしまった自分を悔いながら、第二の人生を歩んでいくんだけど、そのうち島民から英雄的扱いを受けるようになるのね。ところが、その未開の地を狙って大国が侵略してくる。そこでジムは「今度こそ逃げない!」と誓うわけ。結果、彼は英雄として死んでいくんだけど、生まれつき気高い魂を持ったわけではない主人公が、自省して、同じ過ちを繰り返さないという物語に俺はすごく勇気づけられた。

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文:唐澤和也
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