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俺の語感でいうシュールって「ひとりよがり」ってニュアンスがプラスされるんだと思う。シュールと言っちゃえばなんでもアリなのかよっていうね。笑いに限らず、文学や演劇でもシュールと呼ばれるものはあるけど、そのほとんどは狙い所が曖昧で逃げ場を用意しているような気がして俺はあまり好きじゃない。だったら、ミステリーという明確な狙いがあった上で、最後までミステリーとして、こちらを楽しませてくれるもののほうが断然好きだ。

もちろん、シュールの先駆けとなった人たちはすごいと思う。たとえばカフカの『変身』。ある朝、目覚めると巨大な虫になっていた男が主人公というぶっ飛んだ設定なんだけど、不条理小説とも呼ばれた彼の作風は、後世の幻想小説などにも影響を与えているし、偉大な挑戦だったと思う。なにより、俺は『変身』を読んだ時に笑ったから。その時点でギャグとしても成立しているわけで、ひとりよがりでは決してない。現代でも、たとえば野田秀樹さんの芝居って、シュールと言えばシュールなんだけど、随所に観客を喜ばせようとする場面が盛り込まれているから観てて単純におもしろいからね。談志師匠の落語もそう。イリュージョンと言うぐらいだから、シュールと言えばシュールなんだけど、抜群におもしろい。つまり、俺がシュールって言葉に対して否定的なのは、世間的にはそうくくられる中でも、おもしろくてひとりよがりじゃない本物もいるけれど、えてしてシュールと評されるジャンルには偽物がたくさんいるぞってことだと思う

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文:唐澤和也
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