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彼女は小説、エッセイ、脚本などの作品群を残しているけど、それらすべてが素晴らしい。ふだんの俺は、本を読み返すことがないんだけど、今年は向田邦子生誕80周年。それを記念して毎月1冊ずつ刊行されている『向田邦子全集』で解説を任され、俺は改めて彼女の作品群を読み返した。かなわねぇなぁ、全部がすごい。そう思った。向田さんの恋愛は決してふつうのものではなかったんだけど、それに対しても言い訳することも弱音を吐くこともなく、全部隠す。全部隠した上で、エッセイには人生が楽しくて仕方がないとさえ感じられる内容を綴ったりする。その芸の強さに俺は憧れる。

ただ、「書いてるもの全部がすごいってどういうことだよ!」と思って俺なりに分析したんだけど、テレビの脚本を書いていたのがデカイんだと思う。彼女ほどの人ならば、一般常識から離れてグワーッと高みに昇っていくこともできただろうに、テレビというメディアの仕事を続けたために大衆と同じ目線でい続けたんじゃないかって。最終的に奇人と呼ばれる天才より、俺は向田邦子という天才に憧れる理由がそこにある。


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文:唐澤和也
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