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俺が言葉の選び方を意識できるのも、実はある天才のおかげだと思う。その人の名は、橋本忍。黒澤映画を担当した天才脚本家なんだけど、この人がこんなことを言ってるわけ。〈優れたシナリオライターか、そうでないかは、白紙の原稿用紙の前に何時間座っていられるかで決まる〉。当時の俺には、勇気づけられる言葉だった。

脚本家ではないんだけど、うちの事務所に作家がいて、そいつは本当に才能ゼロなんだけど、彼が俺にメールを送ってくることがあるわけ。内容的には俺の書いた文章への感想だったりするんだけど、これがまぁ読んだ人を喜ばせる才能がまったくない。そいつには「言葉の隅々にまで神経を通わせろ!」といっつも言ってるんだけど、まったく直らない。そいつと比べれば、俺は言葉の選び方にはこだわれているんじゃないかなぁ。才能ゼロのそいつと比べている時点で、自分でもかなり情けないとは思うけど(苦笑)。

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「ぴあ」12.17号より
文:唐澤和也
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