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価値観の推移は、これで終わらない可能性を秘めているのが深い。もしも俺の書いた文章が、読者の心に響いたのなら、その価値観は、本の値段から「読者の頭の中」へと移っていく。下手すりゃ、文章を書く前の俺の頭の中以上の価値を見い出す人がいてくれるかもしれない。俺がピカソの「泣く女」を見て、入館料という秤が示す金額以上の価値を見い出したように。ま、これも1回目の「しごとのはなし」で話したけど、俺が読者に響いてほしいと思って書いた文章ほど、反応が薄かったりするものなんだけど(苦笑)。

ホリエモンたちは、この価値観の移ろいゆくスピードに翻弄されたのだと思う。ましてや、俺の文章の例には「感動」という人間らしい感情が左右するが、彼らのマネーゲームは純粋に金を生み出すためだけのデジタルなもの。だが、金のやりとりをするのが人間である以上、カーナビのように、次の推移地点をデジタル表示してくれる指標などなかったはずだ。ある瞬間から、次の価値観への推移を見失ったのなら、彼らもまた、ある意味で人間らしい

亀井勝一郎がある評論文で、次のような言葉を綴っている。《貧乏だからといって倹約だけをするのはよろしくない。道端に咲いている花を摘み花瓶にさすという生活の彩り。こういった行為は人間にとってまったくもって無駄ではない》

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文:唐澤和也
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