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つまり、お金をかけなくても人生を楽しむ方法はあるはずだと。花を愛でる感情は、一見すると価値などなさそうに思えるけど、実は、衣食住と同等の価値があると。でも、もう一歩踏み込んで考えると、すべての人間が花にその価値観を見い出せるわけじゃないよなぁとも思う。だからこそ、お金という秤以外の自分なりの価値観を見いだせるか否かって、俺には相当な才能が必要なように感じる。逆に言えば、お金のはなしってすごく難しいよなぁと

たとえば、勝ち組負け組という言葉を年収だけで判断することに意味なんてないと俺は思うけど、貧乏時代の年収ゼロに対して「情けねぇな」と感じなければダメだとも思う。金を稼ぐという目的は、持たざる者がなにかをしようという時、その背中を押してくれる存在でもあるから。

ただ、俺の場合は、「もっともっと稼ぐぞ!」とはならない。今でも、最高のごちそうは、たまごかけご飯とお茶漬けだから(笑)。俺は、心の底から料理人にならなくて良かったと思う。もしも、今の感覚のまま料理人になり、あらゆる高級料理を作れるようになったあげくの自己最高のごちそうが「たまごかけご飯」と「お茶漬け」だったのなら。「料理人なんて、やってらんねぇ!」、俺はきっとそう叫んでしまうから。

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「ぴあ」1.7号より
文:唐澤和也
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