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チャップリン作品に『街の灯』という長編映画がある。最初にこの映画を見た時は、ロマンチックなラストシーンがいいなぁと感じた。主要登場人物は盲目の少女と浮浪者の紳士。実際は「浮浪者」なんだけど、彼の姿が見えない少女からすれば、なにかと親切にしてくれる彼を「紳士」だとしか思えないわけ。で、チャップリン演じる浮浪者の紳士は、少女の目を治すための手術代を稼ごうと盗みを働く。その挙げ句、捕まって牢屋に入れられるんだけど、釈放された紳士が街を歩いていると、盲目の少女と再会する。

この時、彼女の目は手術が成功して見えるようになってるんだけど、よろよろと近づいてきた紳士に少女はお金を恵もうとする。男は断るんだけど、手が触れあった感触で、その浮浪者が少女にとっての紳士だと気づく。男も「目が見えるようになったんだな」と気づくんだけど、最初はロマンチックだと感じたこのラストシーンも、実は残酷だなと思ったわけ。なぜかと言うと、そのシーンの少女の表情が再会できて良かったという感情にプラスして落胆も含まれていたから。チャップリンの映画に意味があることに気づいてから見直したラストシーンは、俺にとって鳥肌もので「チャップリンはやっぱりすごい!」と更に好きになっていく。

そう考えていくと、俺は「芸人になりたい」という夢を抱いたことがないということになる。

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文:唐澤和也
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