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じゃ、司馬さんが描いた坂本竜馬のなにが好きかというと、そのスケールの大きさと異質さ、そしてなによりも行動力に感動する。

それまで犬猿の仲だったふたつの藩にもかかわらず「薩長同盟」を結ばせたこと。士農工商の身分制度から民主主義化へと移行する明治政府の青写真的な「船中八策」を立案したこと。さらに、ある種の無血革命となった「大政奉還」を促したってこと。裏方っていうかね、それらの偉業は、司馬さんが『竜馬がゆく』を書くまで歴史に埋もれてさえいた。

この三つの出来事を実現したことは本当にすごいことだと思う。当時は「尊王攘夷」ムードで外国人を排除することと江戸幕府を倒すことがふたつでセットだった。薩摩にしろ、長州にしろ、「幕府を倒して天下を取るんだ!」という昔ながらの発想でしかなくて、要は国取り合戦なわけ。

竜馬の師匠である勝海舟には理解してもらえたらしいけど、彼ひとりだけが「開国」と「尊王」をセットにしていた。つまり、竜馬にとっては、倒幕うんぬんよりも、その先があったんだと思う。幕府は倒す。倒すけれども無益な血は流さない。開国する。で、開国したその先に外国を自由に行き来して商売をするという夢があった。ほとんどの勤王の志士が、幕府を倒す革命に酔っていた季節に、竜馬だけが別の夢をみていたってこと

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文:唐澤和也
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