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だから、竜馬は大政奉還が成されるまで真意を勝海舟以外には語らなかった。裏方に徹する。たとえば、薩摩と長州を結びつけるのは幕府を倒すために必要十分条件だったけど両藩は犬猿の仲であると。そこで竜馬は、理想論でなく現実をみて行動する。当時、薩摩はかなりの武器を保有していたけど食料が不足していた。一方の長州は米はあるが武器はない。幕府が長州をつぶしにかかろうとしていたその時期、竜馬は薩摩の武器と長州の米を「商売」させることを発想する。今の中国と諸外国の関係性だってそうじゃない? 思想や主義的にはあいまみえないはずなのに、「商売」なら誰も拒まなかったでしょ? もちろん、竜馬の人柄も魅力的だったんだと思う。実際、薩摩の西郷隆盛も、長州の桂小五郎も坂本竜馬が大好きで、だからこそ彼のプランに乗っかった。

裏方ではなく、竜馬が歴史の表舞台に立ちたかったのは商売だった。実際、亀山社中(のちの海援隊)を作って、薩長間の武器と米のやりとりでもこの会社が活躍する。ところが、志なかばで竜馬は京都の近江屋で暗殺される。享年31歳。竜馬がいなかったのなら、明治維新は成されなかったと思うけど、彼自身はその先をみることが叶わなかった。

今、大河ドラマ『龍馬伝』で香川照之さんが熱演している岩崎弥太郎は三菱財閥の創始者なんだけど、竜馬が維新の「その先」を夢見た亀山社中の魂は、岩崎弥太郎によって受け継がれたってわけ。

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文:唐澤和也
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